宝物 一通の手紙

メンタル崩壊して働く気力も集中力も失い引き籠ってしまい、突然 GarageHRS を何年も閉めてしまっていた時、自宅に一通の速達の書留郵便が届きました。差出人をみると、都筑インターそばで営業を始めた GarageHRS黎明期から ずっと懇意にさせて頂いている九州のお客様からでした。

手紙を読むと、僕が体調を崩したこと、一度は万全ではないものの職場復帰した時にHRSで会えたこと。その後、HRSのわるい噂を耳にしていること、気になって何度かHRSを訪問したものの、営業している気配がなく心配していること。

HRSにはとても世話になったので なにかできることがあれば助けたいと思っているが、このままでは会うこともかなわないので、会社の登記簿をから連絡先を調べて手紙を出したこと。近々また関東へ出張の予定があるので、会って話ができたらという内容が綴ってありました。

たかだか ちっぽけなチューニングSHOP のために 九州から何度もガレージを訪問したり、手間もかかるのに連絡先を調べてわざわざ手紙を送ってくれたり、普通 そんなことをしてくれる人はいないと思います。

その手紙を読み、その人と会って話をして、クルマに対する情熱を失っていた自分の中に小さな炎が灯りました。

「なんてありがたい。仕事も投げ出してしまうポンコツなあなたにも、こうやって支えようとしてくれる人がいる。経営者としては失格かもしれないけれど、あなたがこれまで頑張ってきたことは間違いじゃなかったのでは? あなたの収入がなくてわたしもしんどいけれど、あなたの夢だったガレージをできる限り応援したいし、あなた一人 養うくらいの収入はあるから、無理しすぎないでなんとか事業を立て直しましょ」、手紙を読んだ妻はそう言って励ましてくれました。

このままではいけない、なんとか挽回しないとっ! 働く気力を失ってしまったものの、たまに仕事への意欲が戻るときがありました。瞬間風速的に短期間 頑張って働こうとするも、集中力が続かずまた引き籠る日々。月日の経つのは早いもので、そんなことがあってから2年もの時間が経ちました。

自分が引き籠ってしまった数年間、決して少なくない稼ぎの大半を、僕のためにつぎ込み、老後のためや、自分たちの子供のためにと蓄えていた貯金を切り崩してまで辛抱強く支えてくれた妻。その貯えも底を尽きかけ、とうとう彼女も音を上げます。

「今まであなたが立ち直ってくれるのを待っていたけれど、もう限界! ガレージを閉めたまま 経費を補填していたら、私たちの人生が成り立たない。HRSの再開が難しいなら、お店はたたみましょう。とりあえずあなたはバイトでもして、少しでも稼いでもらって足りない分はわたしが頑張れば生活はなんとかなるよ」

決して誰かをだまそうとしたわけでもありません。速い車を生み出したい、誰かの役にたちたい、期待に応えたい、常に自分の理想を追い求めてきました。しかし本意ではなくても、GarageHRSに騙された、HRSの平山は詐欺師だ、そんな風に言われてしまったのも、すべて自分のしでかした結果です。

落ちるところまで落ちてしまい、最大の理解者だった妻からも引導を渡される状況になって、自分の中に残っていた小さな炎がやっとまた燃えはじめるきっかけになりました。

たったひとりでスタート、たくさんの人たちに支えられながら、懸命に運営してきた GarageHRS。このまま、終わらせてなるものか。チューニングに対する情熱も失っていた自分に、もう一度這い上がろうとする気力が戻ってきました。

引き籠ってしまった自分が負の状態から抜け出すまで 結局 4年弱もの時間が必要でした。

ゼロからの再出発どころか、たくさんのマイナスを抱えて背水の陣。ここでも たくさんの人との絆に恵まれ、スタッフ、お客様、取引業者様、身近な家族や友人、多くの人の支えで GarageHRSを再開することができました。

恩人との2ショット先月久しぶりに再会した 手紙の送り主との2ショット。ガレージの運営が思うようにできなかった時期にわざわざ貴重な時間を費やして送ってもらった1通の手紙は僕の宝物。だいぶ色あせたり、シミができたりしてしまったけれど、時々見返して元気を充電してます。

GarageHRS 再開した時、「よかった! お店開けたんですね。ずっと待ってましたよ」をキラキラ輝かせてガレージに飛び込んできた旧知のお客様には救われました。

昔ながらのお客様に今も通い続けてもらったり、ガレージ再開後にはじめて訪問して頂き、それ以降 懇意にして頂いている方々も多々。

無償の支援でHRSを助けてくれる ライジングサンのJON&そのスタッフ。タイムアタックイベントをきっかけに今でも交流の続いているPowertune Australia、訪日のたびにガレージへ足を運んでくれるQuarter TECH Evolution、HRSスタッフはもちろん、取引先をはじめ、名前は出せなかったり 書ききれないほど たくさんの方々。HRSを支えてくださるすべての人たちに感謝します。

僕は欠点だらけで ひとりではなにもできない平凡な男です。なにか失敗したり、仕事がオーバーフローして応対が後手後手にまわって、ご心配・ご迷惑をかけてしまったり、そんなこともあったりします。

ただそんなダメダメの自分ですが、クルマを愛する気持ち、誰かの役にたちたい、みなさんが車趣味を楽しんでもらいたい、そんな気持ちを胸に HRSを運営しています。